「杏ちゃん、珠ちゃん、こっちやで!!」
「あ、ごめんね、待った?」
「いや、たったの15分や!!」
「雅史、そこは待ってないって言うとこでしょ。」
「え、あ、待ってへん!!」
「・・・今更。」
駅前のオブジェの前で修学旅行班で待ち合わせをした休日の午後。
先に珠樹と落ち合ったあたしたちは、そのオブジェに向かって歩いている途中で柏木くんに声をかけられた。
少し急ぎ足で二人のもとへ行けば、ミニコントのような男子の会話。
先程まで行きたくないと騒いでいた珠樹も、そのやり取りにクスクス笑い、少し緊張が解けた様子。
「ほな、行こか。」
自然とあたしの手を取って歩き出す柏木くんに、少しキュンとしたのは秘密。
「え、ちょ、杏子!!」
「珠樹ちゃん、行こう?」
「あ・・・、うん。」
純平くんと並んで歩かなければならないことに気づいて、焦ったように声を上げたけど、爽やかに微笑まれて素直に付いてく珠樹がものすごく可愛い。
ヤバい、あたしが彼女にしたい。
半分本気でそんなことを考えながら、あたしたちは傍から見ればダブルデートの形で歩き出した。

