彼の目が緩やかな弧を描く。 指差す方を振り向くと、彼と私がガラスに映ってる。それは地下街の入口の傍に建つビルの窓ガラス。 「見えてた、傘を掲げてくれてたよね、助かったよ」 なんて優しい声。 胸がぐらぐらしてくる。 そうか、完全にバレてたんだ。 「ありがとう、お言葉に甘えて傘借りてくよ。また返しにくるから」 彼は私の傘を掲げて、雨の中へと駆け出していった。 とびきりの笑顔を残して。 きっと、また会える。 彼の背を見送りながら思った。 雨はまだ降っている。 ー完ー