道なき恋


「……………な、なに? これ?」

妻の顔が固まった。

「開けてみたら……分かるから。」

妻は、

封筒を開けようとはしなかった。

ただ黙って

封筒を見つめていた。

その間に私は

食事の仕度をすることにした。

料理は日頃から

するので苦ではない。

「ペペロンチーノにでもするか?」

そう言って料理を始めた。

食事が終わって

後片付けをしていたら

「何で? 何でこうなるの? 」

妻が呟いた。

「自分が言ったんでしょ?」

自分が食べたお皿だけを

洗いながら言った。

「そんなの冗談で言ったに

決まってるでしょ!」

何だその冗談って!

妻への想いが

完全に粉々に砕かれた瞬間だった。

「冗談? 冗談って何だ?

お前にとって冗談だったとしても

俺には……」

少し泣けてきて言葉に詰まった。

「どんなに傷ついていたか、

お前に分かるか?

初めのうちは、

‘またかよ’

って思ってる程度だったけど

何十年も言われ続けてみろ!

こいつはもう俺に対して

愛情は無いんだなって…

子供達が居るから

一緒に居るだけなんだなって…

セックスレスもそうだし

言い出したら切りがない!」

私は感情に任せて怒鳴りつけた。