裕太はその背中を見てから、もやもやとした気持ちを晴らすために屋上のドアを開けた。
風が髪を撫でていく。
いつかの、ここで演奏した日を思い出した。
今でも覚えている、真昼の声。
あの一体感。
空に吸い込まれていく感じが、心地よかった。
今も別の意味で、空に吸い込まれていきそうだ。
というのか、終始真昼のことを考えている自分に呆れる。
──しかしまあ、告白をされて「好きな人がいる」と断るのは新鮮だった。
そんな、呑気なことを考えていた時。
キィ…と、扉が開く音がした。
反射で振り返るのと、小さく「あっ」という声が聞こえたのは、ほぼ同時だった。
そこには──…動きを止めた、真昼が立っていた。

