「ちょ、ちょっと...!
 何!?どこに連れていく気!?」


男の歩幅は広く、
私はつい速歩きになってしまう。

腕を掴まれているため
転けそうになりながらも
必死で振り払おうと努力するが

当然、成人の男性の力に
高校生の私が敵うはずもなく…
無駄な抵抗は諦めることにした。


「あんた、ホントなんなわけ?」

私は冷静さを取り戻し
男にたずねた。

「あんたじゃない。
 尽だ。海堂尽。」


尽は真っ直ぐ前を向きながら答えた。


「じゃあ、尽。
 この手、放してくれない?」


私は掴まれている腕を
空いている右手で
指差しながらたずねた。


「それは無理だな。
 放したら逃げそうだし。」

「…。」


まさに私は逃げることを
考えていた。

図星だった私はなにも言えず
黙るしかなかった。