失礼極まりない男は、ジロジロと人を吟味するような眼差しで私の全身を見回していた。
なに、こいつ。キモッ。
「名前を教えろ」
「ハァ?」
教えろ、って、それ。
人に物を頼むやつの言葉じゃないし。
普通はお名前は?とかでしょ。やっぱり失礼なやつ。
「いやよ。何で貴方になんか」
「名前すら名乗れないのか?」
「自分の名前くらい、名乗れるわ。
でも、態度がなってないあんたに、教えたくないだけ。
じゃ。」
もう良いや。関わるだけ無駄だわ。
私はそう感じ、なんだか名残惜しい気はするけど、この桜並木とお別れすることにした。
が。
ぱし、と。
金髪の不躾男は私の腕をつかんだ。
・・・ほんっと、迷惑なんだってば。
「ちょっと・・・っ!」
「うるさい。黙れ」
そう、言葉とは真逆の甘くて優しい声に、私の心は警鐘を鳴らす。早く、こいつから離れないと。
「は、はなして、・・・!?」
くちびるから伝わるのは柔らかで生暖かい。目を開いたまま、私は冷静に今の状況を模索する。
え、と。
金髪の不躾男に腕を掴まれ、て?
引き寄せられて。
、き、す。
キス、され・・・て、る!?
「っ、い、いやっ!」
「っ!何をする。」
私が思い切り押した為か、胸を痛そうに押さえて私を睨むように見る。
な、なんで私が悪いのよ!
「何をす、っ、するはこっちのセリフだわ!」
「何って。決まっている。キスだ」
ふふん、と傲慢な態度で私を見下すようにして、その不躾男はあっさりと言って退けた。
な、なっ・・・初めてが、こいつ!?
い、嫌過ぎ!死ぬ!
「お前が名前を名乗らないからだろう。自業自得だな」
「どこまで偉そうなのよ、怒変態!死ねっ!」
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