暗い闇の空間にガラスの粒子が散り、星となって輝いている。
床には10個、大きさのまばらな箱が置いてあり、それぞれが1つの世界であり、国であった。

この箱庭の世界を創ったイザヤは、目の前の小さな箱を眺めていた。
創造の神であるイザヤは、人間での性別は女性で白いローブを着ている。
顔半分が隠れるほどのフードを被り、ただ沈黙を続けていた。

小さな箱庭には1つの都市があり、そこには人間が住み、日々忙しなく暮らしている。

「そろそろなのか」

イザヤが気付くよりも早く、黒いローブを着た破壊の神、イザトが声をかけた。

イザトは男性で、イザヤと同じくフードを被っている。
体格はイザトの方がごつい。

「アダムの“地球”に存在する都市を真似て創ったこの世界は、日々崩落に向かっている。イザトの力がなくても、いつかは滅びるかもしれない」

顔を上げることもなく、淡々とイザヤは言った。
その言葉に感情が感じられないのは、表情が見えないせいではない。

「もう1つの東京か…」

イザトが呟くとイザヤは目を合わせて応えた。

「いや、透叫だ。地球にあって、地球にない都市」

フードから覗く目は深緑が淡く、瞳の漆黒には闇が輝いていた。
その輝きにしばし心奪われ、イザトは我に返って問い掛ける。

「なぜ創った?」

「それは…」

イザトの問いに最後まで答えず、イザヤは再び箱庭へ視線を向けた。