店の外には誰もいない。

生物の気配は何もない。
砂の嵐と
俺の叫び声だけ。

「誰もいなかったでしょ」

スナック【シェルター】
その名の通りシェルターとなっており、偶然飲みに来た俺とママの真琴だけが核爆発から助かった。

何度も何度も
生存者を探して見たけど、誰もいない。

「飲んだら?」
真琴がカウンターの中から声をかける。
俺は差し出されたバーボンを一気に飲んだ。

「ヒゲ……伸びてきたね」
真琴は手を伸ばし
そっと、俺の顔を触る。

「カミソリは用意してなかったわ」
笑っている。

「楽しそうだね」
イラつく俺と

「あなたとふたりならね」
満たされている真琴。

そんな時
扉の外から声が聞こえてきた。
生存者か?

俺は勢いよく席を立つと、真琴に止められた。
「やめて。行かないで!私はあなたがいればいいの」

「俺は嫌だ!早く行かないと」
真琴を振り切り外に出ようとすると、首に細い物を巻かれ、そのまま後ろに思いきり引きずられた。

「アタシがいるのに……どうして?」

真琴
かわいそうなスナックのママ。
おかまバーのママ。

俺は、泣き叫ぶ力士並みの体格を持った、ヒゲ面の男に唇をふさがれながら、意識をなくしていた。




    【完】