「おはよーございまーっす!」
扉を開けて、あいさつをする。
誰かがいてもいなくても、これが私の日課だ。


『あ、おはよう!まこちゃん。今日も元気だね!』

誰もいないと思っていたのに、デザイナーの裕子さんが出勤していた。

「あ!おはようございます、裕子さん。今日は早いですね、誰か予約入ってましたっけ?」

『うん、今日は笠原様の予約が入ってるのよ。2ヶ月前にオーダー受けたリングのお受け取りなの。』

頭の中で笠原様のリングを思い出す。
K18の華奢なリングにダイヤモンド、その両脇をエメラルドとトパーズで挟んであるデザインだった。

「あ!笠原様の!あのリングかなりかわいく仕上がりましたよねー!たしか、娘さんの誕生石と、その両サイドに奥さんとご本人の誕生石を入れてあるんですよね?笠原様に見ていただくの楽しみですね♪あんな旦那さんがいる奥さんがうらやましいですー!」

『そうよね、ほんと、素敵な旦那様!って感じの人だよね、笠原様。気に入ってくれるといいわね。』

オープン作業をしながら、裕子さんとお客様の話で盛り上がった。