藍よりも深く

私は接客のプロだ。相手はお客様。冷静にならなきゃ。エンゲージリングということは、金額もそこそこはいくだろう。
お店のためにもがんばらないと。

まことは必死に感情を落ち着かせ、仕事に戻った。

「高橋様、お待たせいたしました。こちら、直近3ヶ月のお客様のオーダーエンゲージリングの資料です。そしてもう一冊が、我が社の既成のエンゲージリングの資料。なにか気になることや、予算
、デザインのイメージなどございますか?」

まことがいま出来る、とびきりの笑顔を作り、いつも通りの説明をする。

『えっと…細かいことはまだ考えてないないのですが、普通のダイヤモンドではなく、ピンクダイヤを使いたいな、と思ってるんです。』

「かしこまりました。では、お持ちした資料の中でピンクダイヤを使用してるものをピックアップしますね。」

作業しながら、まことは言葉を続けた。

「高橋様は当店は初めてではないとは思いますが、あらためて当店のオーダーシステムをご紹介させていただいてもよろしいですか?」