そんなことを思案していると、一人の人物の顔が浮かんだ。
日本人形のような、ストレートの黒髪に、いつも、着物を着ているような、お譲様。
笑うと、とても、かわいらしい女の子。
本来は女性と言った方がいいのだろうが、何か、かわいらしい。
そんな女性の隣に、やっぱり、単体では、童顔で、けれど、結構な美形の青年がいる。
優しい笑顔でその女性とよりそっている。
『私達、結婚するんです!!
雪ちゃんありがとうね!!』
『色々と、ありがとうございました。
雪さんには色々と迷惑をかけてすみませんでした』
「あ・・・」
やべえ、思い出した。
ついこの間、会ったばっかりじゃん。
「お隣の居候だったゆう君じゃね?」
あだ名で覚えるから、本名を忘れる。
というか、あまり覚えない。
「そうだ」
「え?じゃなに?あんた、ゆう君の同居人?
ということは、お隣さんかよ」
「てか、私に聞くんじゃなくて、本人にきけよ!
あんた達の問題だろうが!」
「分っているんだ!
ちゃんと理由も聞いたし、理解もしている!!
だが、納得できないんだ!!
君は、俺と裕也が付き合っていたことを知っていただろう?
君は、俺を知らなくても、裕也はよく、こちらにお邪魔していたことは知っている。
家にいずらいとき、どうやって知り合ったのかは知らないが、よく、相談にものってもらって いたとも、きいていた。
沙希が裕也を好きになるのは、分っていたんだ。
俺と従兄で、俺と趣味がよくにていたから。
そして、裕也も・・・。
少しずつ、少しずつ、自分から、沙希の方にこころが動いて行っているなんてことは、裕也を 一番に見ていた俺だから、気付いていた。
けれど、きづいていないふりして・・・。
俺は・・・」
微かに、扉越しに、啜り泣く声が聞こえてくる。
雪花ははあ、と溜息を吐いた。
正直に言うと、めんどくさい。
めんどくさいのはいやだが、ここまで来たら、ほうっておく事もできない。
いや、本当はそうしたいのだが、自分のなかの微かにある良心が痛む。
それに確かに不憫だなとも思うからこそ、今まで閉めようとしていた扉を、ゆっくりと開けた。

