1.迷惑男


「・・・・」

 なぜだろうか?

 自分のマンションの自分の部屋のドアの前に、人が倒れている。

 いや、よっぱらいだろうことは、さっしはつくし、わかるのだが、こう言ってはなんだが、自分の住んでいるマンションは、実は、高級マンションで、しかも最上階の一つで、セキュルティはそこらの、マンションとは、比にならないほどいいはずなのが、・・・。

 そう考えると、そのよっぱらいは、この階の人間だということが分るが、いかせん、お隣近所?と交流何か、もちやしない。

 だって、めんどくさいし、そんなのは、ここ、大都会では、不要だ。

「・・・」

 本庄雪花28歳は、よっぱらいを無言で、ドアの前から、無造作に、脚で退けた。

 本来ならば、一言位、『大丈夫か』をたずねるのだが、ただ、よっぱらいだとわかっている分、なんだか、めんどくさい現状に陥ることが、分っているので、あえて、無言で自宅の前ドアからずらしたのだ。

 はっきり言おう絡まれたくないから。

 その時、垣間見えた、その、よっぱらいの顔は、思っていたよりも、随分若く、26歳ぐらいに見えた。 

 そして、一般論でいう、眉目秀麗な精端な顔立ちをしていたのは、意外だった。

 よくよく、見るとまあ、身体の均衡も、整ってる。
 
 普通にしていたら、まちがいなく、もてるだろう。
 
 今現在も、よっぱらって、地べたに寝転がっている状態でも、よくよくみると、絵になる。

「・・・」

 雪花は、またも、無言で、自宅のドアを開けて、よっぱらいの美形をそのままに、家に入っていった。

「まあ、美形だろうと、めんどいことはおことわりだね」

 そう、誰にいうでもなく、呟きながら、青年を放置したのだった。

 だが、ドアは、完全に閉まることはできなかった。