ピーーーーッ。
僕が言い終わると同時に聞こえてきた機械音。
彼女が笑った気配がしたから、伝えれたのだろう。
今、彼女は消えた。もう現れないだろう、二度と。
それから、耳を澄ましても聞こえてくるのは電話が切れたことを告げる音だけで。終わったんだ、今までの奇跡はこれで。最後。彼女がいないから、最期。
ポツ、携帯を持っていた手に温かいものが落ちた。部屋のカーテンから差し込んでくる光は淡く、儚い光だった。
しかし、その光は今の僕には歪んでしか見えない。涙で視界がぼやける。まだ胸の辺りが苦しくて服を握る力を強めると頬を温かいものが流れていった。次々に溢れたすそれはベットのシーツに染みを作っていく。
そこに朝日の光が差し込み、流れて落ちていく雫を照らした。
その美しさに僕は暫く惚けたままだった。

(その後、気を失うように眠りについた僕は疲れなんかなく、逆に清々しく目覚めた)