「沙織?」 駅まであと少し、という横断歩道でイガラシは言った。 その名前をあたしは忘れるはずがなかった。 横断歩道の向かい側には、今にも泣きそうな顔で立っている綺麗な女の人がいた。 綺麗で、大人なその姿は、間違いなく前にも見た、沙織さんだった。