車に乗り込んで、エンジンを掛ける。

家に着いたら、綾に電話しよう。

メールより電話だ。

声を聞いて、声で伝えて、もっともっと綾に近付きたい。

綾と――そうだ、約束をしよう。

何か――、どこか――、次へ繋ぐ何かを俺と約束してもらうんだ。

『俺のことはもういい。気にするな』大輔さんの言葉がよぎった。

この言葉を俺がとても恐れていることに気付いてしまった。

恐れている――そうだ、俺は綾からこの言葉を告げられることを恐れている。

確かなものがないから。

そんな不安を感じる理由がないくらい近付きたい。