「こういうことよ。百合ちゃんは前から恭司大好きっコだったのよ。恭司のバンドの解散ライブあったじゃない? それにわたしたちも行った。百合ちゃんも来てた。席が近くてね、何も知らずに初めて会った大輔は百合ちゃんに一目惚れ。あのコは恭司ラブだからやめとけって言ったのに告白。撃沈すると思いきや、意外にもあっさりOK。でも条件付だったのよ」

「静!!」

「いいじゃない。わたしは真実に基づいて話しているだけよ」

「条件って、なんすか?」


俺は大輔さんを見ないようにしながら静さんに聞いた。

一口、今度は口を湿らすためのように静かに缶に口をつけた後、静さんが答える。


「恭司と親しくなれたら、大輔とはバイバイっていう、条件。しかも恭司には内緒ってことで」


唖然とした俺はそっと大輔さんの顔を見た。

下唇を噛んだ後、缶を開け、ビールをグイッと飲んでいる。


「大丈夫よ。バラしたのはわたしなんだから。あのコもあの時、わたしに聞かれてたことを後悔するでしょ」

「今日は全くなんて日だ」


大輔さんが吐き捨てるように言った。