そう言った大輔さんはどんな想いで俺に話していたのだろうか。

そして俺は苦笑いしてしまった。

今頃になって気付く。

上野のメールの《ごめんなさい》がどういうことだったのか。



不思議と上野に対して激しい怒りとかは感じていなかった。

なぜだろう――。

上野の泣き顔が浮かんできて、またひとつ苦笑いをする。



一ヶ月という時の流れが俺の記憶の中でゆっくりと再生されていく。

そして、俺の居ない、綾の一ヶ月を思った。

綾はきっと今、東京にいるのだろう。

真摯な姿勢でイラストに取り組んでいる姿が浮かんできた。

もしかしたら、バッグを盗まれたときも何かを描いていたからかもしれない。

きっとそうだろう。

俺は小さく自分に頷いた。

綾が「描く」こと、その大切さを思い出すように。