まだ20時前だというのに空は闇に包まれて黒く染まっている


夢の中の世界は真っ白だったのに現実はこうだ


賑やかな街並みに似つかわしくないパンクロックを耳から流し込みながらボーッと眺める


23歳、フリーター。

チェーン店の居酒屋のバイトへ向かうために家からの道をぶらぶらと歩く


バイト先はシブヤと言うきらびやかな街にあり、私の家もまたその眠らない街にある


私の"人を寄せ付けないオーラ"に信頼性は無く、ナンパやキャッチにとどまらずおばあちゃんやなんかに道を聞かれたりもする


「あ、NHKホールならこの一本隣の道を真っ直ぐ行った方がわかりやすいですよ。道も大きいし。人も多いからまたわからなくなったら誰かにすぐ聞けますから」

いつものように淡々と笑顔で応えてまたイヤホンを耳に突っ込む


進み出した足をふと止めて空を見る


今日は雲もほとんど無くて星がよく見える


都会からだって見ようと思えば星くらい見える


目を閉じて星の残像に心を溶かす


愛する人と一緒に居られるのはすごく幸せなことだと思う


この残像さえ笑って見える