「椎名さん、ありがとうございます。」

「ん。あと、名前でいいから。」

「じゃあ要さんで。
私の事も名前で呼んで下さい。」

「それじゃあ…天音ちゃんは
氷枕を翔太に持っていって。」

「はいっ!!」

今度は氷枕を持っていくだけだから
失敗はしなかった。

「翔太ー。氷枕持ってきたよ。」

「ありがとう、天音。」

「具合はどう?」

「寝てたらだいぶん楽になった。」

「そっか。良かった。」

氷枕を翔太に渡して床に座った。

改めて部屋を見渡すと沢山の楽譜や
音楽関係のCDやDVDで一杯だった。

(本当に音楽が好きなんだな…。)

ふと、棚に飾られている
1枚の写真に目に入った。

綺麗な女の人と小さい男の子の写真。

もしかして…。

「ここに写っているのは翔太とお母さん?」

「そうだよ。」

「へぇー!!綺麗な人だね!!
そういえばお父さんの写真は?」

「父さんは俺が産まれる前に
病気で死んだんだ。
だから一緒に写っている写真は無いよ。」

「そうなんだ…。」