「♪~♪~♪…」

あ…まただ。

あの歌が聴こえる…。


その人は木の側で、肩まである黒い髪を
なびかせながら街に向かって歌っている。

幼い私はその人に話しかける。

「それ…誰の歌?」

「これはね、大好きな人が
私に作ってくれた歌だよ。」

「誰に歌っているの?」

その人はニッコリ笑ながら答えた。

「とても…とても大好きな人に
向けて歌っているのよ。」

「ここから歌ってその人に聴こえるの?」

「さぁ…でもきっと届くって信じているわ。」

そして、その人はまた歌い始める。

大好きな人に想いをのせて…