天使の歌声


「どうしよう…これ…。」

あのまま持ってきてしまったらしい。

今から引き返すのは……
車はもう家に向かっているので多分出来ない。

使ったまま返すのも悪いし…

洗っていつか返そう。

「いつか……か…。」


その『いつか』はいつになるのだろう。

今回は車がたまたま故障になって
天音に与えられたわずかな『自由な時間』。

普段は父親のせいで自由な時間など全くない。


「お嬢様?どうかなさいましたか?」

運転手に声をかけられ我に返った。

外の景色を見ると見慣れた
豪邸が目の前にあった。

どうやらもう家に着いたみたいだ。

「ごめんなさい。何でも無い。」

「そうですか?
では、明日のパーティーの準備がありますのでお部屋でお待ちください。」

「うん。」

天音は頷き、
家の中へ足を運んだ。