「……その先の喫茶店で、化粧を直したいので一緒に行ってくれませんか?」


思わずそう、口に出していた。しまったと恥ずかしそうに笑うと、男性は傘にそっと入れてくれた。それが彼の答えだった。


近くの喫茶店を目指して歩き始めた。知らない人と肩を並べて歩いているのに、少しだけ心が軽い自分がいた。


それは今まで感じたことがなく、不思議な気持ちだった。


レストランに入り、すぐに化粧を直しにトイレに向かった。テーブルに戻るとホットコーヒーが二つあり、私の顔を見ると、彼はほっとした様子でコーヒーに口をつけた。


そして私の顔を見て、もう一度言った。


「実はタイプだなーと思って声を掛けたんです。瞳がとても綺麗ですね」