暗闇の鎌【読みきり短編集】

――もう、なくなってしまう。

ならばいっそう、全てを使い切ってしまえ。


そんな感情にとりつかれ、上下に動かしまつ毛に縫ったぐった。少しだけ鈍く、瞬きが重くなる。

目尻にちょっぴりだけ、かゆみも走る。それでもお構いなしだった。


隣では、何度か水の流れる音は聞こえたが、集中しているのは手鏡だ。変な匂いや音が聞こえようともまつ毛を綺麗に塗る。その行為だけに没頭していた。


「これだ……これなら良いでしょう翔太君、これで決めて欲しい。

もうこれを使わなくても良いほどに、私に夢中になって欲しい……

結婚指輪を買わせちゃう? んーそれより婚姻届を書かせちゃう? 今日で最後、今度こそ貴方を心も体も私のものにするわ!」


そんな魔法の言葉を、ここでもまた繰り返し、つくりあげては発していた。