暗闇の鎌【読みきり短編集】

 ――残業なし。定刻に今日も業務を終了する。


我慢大会のような時間が終わると、恋愛ゲームが始まる。そのワクワク感に自然と体が浮き立った。翔太君に会えるという喜びのせいだ。


終わったら身支度を素早くし、続いて迅速にトイレの個室に駆け込む。

鞄からそっと取り出した手鏡を見ながら、マスカラをまつ毛にそっと塗りこんだ。


化粧を完了した自分を見ると、ほうっと溜め息を吐いた。


息を吐くというのは、考えすぎるときに出てしまいがちだが、私の吐くという呼吸は、生き返るような目を覚ます希望だった。


だが今日はちょっと違う。

先端を入れては出し、上下に先っぽを動かした。なくなりそうなマスカラを全部付着させるためにだ。