暗闇の鎌【読みきり短編集】

「気のない返事だな、酔っ払ったの? 

んー、呑みすぎたのは俺のほうかな……ちょっとトイレに行ってくる」


彼は鏡に見とれる私を横目で、グラスのワインを一気に飲み干し、ふらふらとトイレに向かった。でも知っている。ズボンに手を入れ、着信を消したこと。


――もしかしたらメールを返信するのかもしれない。


頭の片隅によこしまな考えが浮かんだが、前とは違う。


そんなことよりも気になるのは鏡だ。


「本当にこの鏡、綺麗……」


美しい鏡に映る自分も、鏡に引けを取らず、同様に美人に見えた。


「私ってこんなに美形だったっけ――?」