地図に夢中になって駆けていたら足元がぐらついた。
「え?」
ひやっと冷や汗をかいてしまう。
下を見ると、うわあ、海!
お、落ちちゃう!
「紗英!」
落ちるまさにその直前、涼君の指が、腕が、あたしを引き止める。
そのまま一歩、二歩と後ろへ下がる。
あ、危なかった〜。
「涼君、助けてくれてありがとう」
ちゃんと向き直ってお礼を述べる。
涼君は頭を掻いて、あたしの方に両手を乗せた。
「なにしてんの!?危なすぎ!」
うお、怒ってる…。
そりゃ、そうだよね…。
「ごめんなさい」
そう告げた瞬間、涼君に引き寄せられた。
「紗英が無事でホント良かった」
耳元で聞こえる涼君の声。
あのね、さっきからドキドキが止まらないんだ。
「……ううっ」
つい、ずびーっと鼻水が出てしまう。
うわ、台無し。
「ちょ、鼻水つけないでよ」
慌てて離れる涼君が面白い。
「あはっ、つけないから、もう少しだけこうさせて」
今度はあたしの方から胸に顔を埋める。
こんなに涼君にドキドキしてるのは、きっと好きだから。
あたしは涼君が好きなんだ。


