「なかった……」



下を向いて弱々しい声で答える柚季君。


「まあ彼女役を引き受けた私も私だけどさ……」



と、その場がしらける。



だ、誰か、喋ろうか!空気が重いんだけど!



と、そこに優祐が口を開いた。



「僕は〜、別れた方がいいと思うなあ!」



その発想に私と柚季君はバッと優祐の方を向いた。



別れる……か。



ある意味いい選択かもしれない。



「でー、それでも好きだったらまた告ればいいじゃん!」



言い終わった優祐はどや顔。


いい提案なんだけどさ、そのどや顔やめてくんない?


イラっとするから。



「俺、別れたくないよ」



「だーかーらー!それは付き合ってるからそう思うの!別れてちゃんと考えて、それでも好きならそれでいいじゃん!」



ね?とまたどや顔。



だからさぁ、そのどや顔やめてくんない?



でも、その提案はいいと思う。



「私も優祐のに賛成!別れてでもまだ好きで告白して、OKもらえたら、それでいいじゃん!もしダメだったらそれこそ自分が選ばれなかったってだけでしょ?」



少しずつ柚季君が顔をあげていく。



私も柚季君の真ん前にしゃがみ込んで、もう一言。



「それこそ最初に言ってたことでしょ?選ばれなかったら諦めるって!」



私の言葉を優祐がつないで行く。



「ね、どう?そうしてみないー?なかなかいい感じのだと思うんだけどなぁ」



一番この方法が手っ取り早いとおもうんだよねー。


柚季君はまた下を向いてすぐ私たちを見た。


その表情はさっきみたいな弱っちい感じじゃなくて、意を決っしんしたような顔だった。



「俺、彼女と別れるよ」



うん、そして、幸せになれ。



柚季君なら絶対なれるから。



「今日は2人ともありがとな」


そう言って最後に笑った。