「開けるよ」

知羽であろう者は銀の返事を待たずに襖を開けた。そして特に言葉なく部屋に入ってくる。

「電気、点けないの?」

知羽は暗い部屋を見回しながら言った。銀はそれに渋々起き上がり、電気を点けた。部屋の中は一気に明るくなり、軽い目眩を覚える。

知羽は部屋が明るくなったことに満足そうに頷いてから、握り飯を銀の前に出してきた。

「……お前も鬼、なんだよな」

銀はそれを受け取りながら訊いた。すると知羽は小さく頷く。だが、それ以上は返してこなかった。

これは他の鬼と違う。

漠然とそう思った。何が、とは言えない。ただ違う、と肌が騒ぐのだ。

「知羽は、知ってるんだよな?」

銀は握り飯に小さくかぶりついてから尋ねる。握り飯はやはり程好く塩が効いている。何故、ここまで好みが判るのか。ただの偶然か。

「鬼神姫のこと?」

知羽は握り飯を食べる銀をじっと見ながら返してきた。銀はそれに米を咀嚼しながら頷く。