心の中に渦巻く感情を整理出来ずにいた。

銀は大きく溜め息を吐いた。ここにきて迷いが生じるなど、思いもしなかった。

過去の話を聞かされたからか。

一人の番人が彼の鬼神姫である葛姫を殺した。そして、恐らくその番人の末裔がまた、現鬼神姫である雪弥の命を狙っている。

その理由は一体何なのだろう。

「なあ、腹減らないか?」

自室でぼんやりと転がっていると、ふと声がした。それは夕べのものと同じ。

暗闇に響く声。

「少し」

銀は胃の辺りを擦りながら答えた。そういえば、朝から何も口にしていないはずなのに、空腹は極端に少ない。

全く感じないわけではないが、少ししか感じないのだ。それでも腹が減ったかと問われれば感じてくる。

妙な感覚だと思う。