「番人て、鬼でも代わりが務まるのかよ」
だったら自分が此処に呼ばれた意味などない。鬼なら緋川の他にもいるのだ。
「通常であれば務まりませんよ。私だから務まるのです」
緋川は嫌なことを噛み締めたような表情をしている。す、と伸びた眉を歪ませていた。
「私の先祖である緋鬼の一人は、葛姫が斬られる前に西の番人と契りを結んでいたのです」
その契りというのは、番人達が鬼神姫と交わした契約とは違う意味の、男女の契りであるということが解る。
「そうして、一人の鬼と人間の間の子が誕生した」
そんなことが可能なのか、と思う。
確かに鬼と人間の違いを感じことは今のところはない。見た目は寸分も違わないのだから。
かといえ、種別が違う。
「ですから、非常に不本意ではありますが、私の中には人間の血が流れています。それも、西の番人のものが」
銀は緋川が人間を好まない理由を漸く理解した。自分の中に流れている人間の血は、曾て葛姫を斬り殺した者のものだと知ったとき、緋川がどう感じたのかは銀には想像出来なかった。
それより何より、緋川は他の鬼と違い、純粋な鬼ではないということだ。

