「数百年前の話です。時はまだ戦国、動乱の時代。貴方がたの先祖は東西南北に身を置いていました。それぞれの地を護り、暮らしていた」
緋川の淡々とした口調が脳に届く。だが、何処か肝心なことを避けているかのような話し方だ。
「貴方がたの先祖は、とある事情より、当時の鬼神姫ーー葛姫に助けを請います。鬼神姫は鬼をも神をも越えた存在」
とある事情。それを話さないのは何故か。それについては銀は既に知っていた。
とある事情というのは、陽に深く関わっていることなのだ。それがあるからこそ、陽は番人の務めを果たすと決めているのだから。
「鬼神姫は鬼のなかでも人間にえらく興味を示すお方だったそうです。なので、人間共の些細な願いを聞くことをお決めになりました」
言葉の端々から、緋川が心の底から人間という生き物を好いていないことを感じた。鬼と人だからなのか。それだけで、ここまで人間を毛嫌いすることが、下等な生物と見ることが出来るものなのか。

