鬼神姫(仮)




「雪弥様、どうかされましたか?」

緋川が雪弥の細い身体を支えながら尋ねてきたが、とてもではないが答えられる状況ではなかった。

背中の痛みは更に増す。それと同時に胸の動悸も早くなる。

「ああ……っ」

雪弥は激しい痛みと動悸に絶えられず、意識を手離した。



ーーーー…………


龍様、と呼ぶのは自分の声ではない。自分のものよりもう少し高く、可愛らしいもの。

目の前には艶やかな着物を着た男。その着物は緋川が好んで着ているものと似ている。

『葛姫』

優しい声に腕を伸ばす。
男の顔はよく見えないが、そこに優しい笑みを浮かべていることだけは判った。

『また空を眺めていらしたのですか?』

唇が勝手に動く。

『此処が常世に近いのなら、私は生きているのでしょうか』

少しばかりの寂しさを含んだ声に、こちらの胸が寂しさを覚える。