「……兎も角、貴方のことは私がどうにかします。それまで大人しくしていて下さい」
雪弥はそれだけ言い、屋敷の中へと戻っていった。
ーー初めてこんなに人間と言葉を交わした。
それだけのことが胸の奥を熱くさせた。それと同時に胸の更に奥に芽生える感情。それは自分のものではなかった。
ーー龍様。
そう呼ぶのは自分の先祖である葛姫か。
龍とは、誰なのか。自分の知らない名前。自分の知らない感情。それらが渦巻く。
雪弥は途端に動悸を感じ、着物の襟を掴んだ。そして、その場に崩れる。
苦しい。苦しい。背中が焼け焦げるように熱い、痛い。
のたうち回る程の苦痛に雪弥は床に手をついて、喘いだ。
痛い、熱い。
まるで背中が避けるかのような痛み。
「雪弥様っ?」
声にならない声を洩らしながら苦痛に耐える雪弥に気付いた緋川が血相を変えて飛んできた。

