鬼神姫(仮)





「マジかよ」

考え込む雪弥に銀はまた溜め息を吐いた。

だって、自分は鬼神姫なのだ。誰かに謝る必要はないというより、謝らなくてはならないような行いをしたことがない。

「なら、今、生まれて初めて謝れ」

銀は明らかに雪弥を見下ろして言った。雪弥はそのことに驚きを隠せなかった。そしてまた、自然と笑いがこかきたのだ。

「は? なに笑ってんだよ」

それに対し、銀はあからさまに不機嫌な顔を作った。

「ご……ごめんなさい。なんか、こんなふうな口をきく人は初めてだから」

雪弥はどうにか笑いを堪えようとしたがそれは難しく、最終的には声を出して笑った。すると銀も何故かそれに合わせて笑ってくれた。

青空の下、暫く二人の笑い声が響いた後、二人揃って息を整えた。

それから直ぐに、雪弥は小さく口を開いた。

「今夜には帰れるように手配します」

それを聞いた銀が酷く驚いた顔をするので、雪弥は不思議に思った。あれ程に帰りたがっていたというのに。