蒼間が用意した食事を自室で終えた後、雪弥は広い庭を散策した。部屋から出ることに緋川は渋い顔をしたが、一日に二度も襲撃させることはないと説き伏せると、苦い顔で承知してくれた。
庭には花はない。あるのは木々。彩りを感じることの出来ない庭を歩いていても面白いことは何一つとしてない。ただ、部屋にいたくなかった。
部屋に一人でいることが苦痛だった。いつも一人だった。
『鬼神姫』という存在のもと、丁重に扱われ、死の運命を背負っているからこそ、脅えた。
雪弥は小さく息を吐いて、足を進めた。そんななかで、庭に佇む人影が目に入った、
「何をしているのです?」
その人影が銀のものであると直ぐに判り、雪弥は近寄り声を掛けた。すると銀は静かに顔だけを雪弥の方へと向けた、
「逃げる準備」
銀は何をするでもなく、さらりとそれだけ言うので、思わず雪弥は笑ってしまった。笑っていいような状況でないことは理解しているが、何故か笑いが込み上げてきたのだ。

