「呼ばれなくとも起きてるぜ」
その声は陽という者。雪弥はそれに耳を澄ませた。しかし聞こえてきたのは陽の声だけで銀のものはない。
「彼処だっ」
浅黄の太い声が叫ぶ。
「散りし花。散りし刻。散りし命(めい)」
陽の静かだがやけに強さを感じる声が届く。それは耳にではなく、心の奥へと響いていく。
襖の隙間から一瞬、目映い程の閃光が見えた。それと同時に辺りを渦巻いていた不穏な空気が一気に取り払われる。
ーーこれが番人の力。
雪弥は少し乱れた浴衣を直してから部屋の外へと出た。
そこには鬼が三人と一人の人間。やはりそこに違いなど見付けられない。
「ご無事ですか、雪弥様」
緋川が手に光らせていた弓を消してから雪弥へと近付いてきた。雪弥はそれに、ええ、と答えてから陽へと顔を向ける。
陽は昨日より幾分凛々しい瞳を雪弥に向けてきた。何かを決意した者の瞳だ。

