鬼神姫(仮)




朝の挨拶の代わりに強烈な轟音が耳に届き、雪弥は飛び起きた。

屋根に何かが激突したような衝撃で屋敷全体が揺れる。

「何事ですかっ?」

雪弥は浴衣姿のまま、廊下へと飛び出す。音のした方向へと走ると庭では既に緋川と浅黄が控え、臨戦体勢に入っていた。

「姫様。お下がり下さい」

緋川が低い声で告げ、光で出来た弓を構える。浅黄は両の掌を空に翳し、そこへ目映い光を集めていた。

「此方へ」

二人を見る雪弥を蒼間が庇い、部屋へと下がるように示す。

「いえ、私も此処で」

「いけません。まだ敵の姿が確認出来ていません」

蒼間は強い口調で言い、雪弥を奥の部屋へと押し込んだ。雪弥は突然のことにバランスを崩し、畳の上に小さく倒れ込む。

ーー何故、此処まで。

不可思議さが頭を過る。

「番人どもを起こしてきなさい」

緋川が蒼間に告げる声が耳に届いた。