鬼神姫(仮)




陽は電気も点けずに部屋の隅に座った。

同じ和室たというのに生家のものとは比べ物にならない程綺麗な畳や柱。それでも陽の生家よりこの家の方が遥か昔からあるのだろう。

ーー覚悟してきたはずなのに。

陽は暗闇で畳の目を撫でた。本物の井草の感触が指に伝わる。

聞かされた運命。定められた運命。
どれも納得してきた。只一つだけ、納得出来なかったことがある。

何故、誰かの為に他の誰かが犠牲を強いられなければならないのか。そんなこと、認められるわけがない。

その為にも、現鬼神姫に死なれては困るのだ。自分の命を擲ってでも彼女を護り通す。

『それは先輩が納得出来ないことと同じじゃない』

涙ながらに言う姿が脳裏に浮かんだ。

説得出来るだけの言葉は何一つ浮かばなかった。説得出来る理屈など何もないのだから。