「腹、減ってるんだろ? ほら」
知羽と名乗った男はそう言って二つの握り飯を銀の前に差し出してきた。それには海苔はまかってなく、ただの白米のみだったが、空腹の銀にはとてつもなく旨そうなものに見えた。
「食えよ。毒なんて入ってないから大丈夫だ」
知羽は言いながら握り飯を銀に押し付けてきた。
「……さんきゅ」
銀はその行動に少し戸惑いながらもそれを受け取り、一かじりした。握り飯は塩が丁度よく効いていて、米の甘さも感じられた。
「旨い」
銀が言うと、知羽は嬉しそうに笑った。
ーー鬼も、何も悪い奴ばかりではないのか。
そんな知羽を見ながら銀は二つの握り飯をあっという間にたいらげた。その間、知羽はずっとにこにことしながら握り飯を頬張る銀を見ていた。
「ありがとな」
銀は握り飯が包んであった葉のようなものを知羽に返しながら言った。すると知羽は、お前の為に用意させたものだから礼はいらない、と答えた。
ーーどういうことだ?
そう問い質そうとしたが、知羽はそれ以上何も言わずに静かに部屋を出ていってしまった。

