「誰だ」
その声は廊下の方から聞こえたようで、銀はそちらに向かって尋ねた。
「人間に名乗る名前なんてない」
苛立ちを煽るような科白。銀はそれを無視した。
「腹、減ってるんだろ?」
だがその声はそれに構わず続けてくる。人間と関わる気がないのかそうではないのか判断の出来ない奴。声からして自分とさして年の頃は変わらないようだ。
「取り敢えず、開けろよ」
声は少しばかり偉そうに言う。鬼という生き物はどいつもこいつも偉そうなのか。
銀は少々思案してから障子に手を掛けた。
廊下には異様に美しい青年がいた。
夜に輝くのは真っ白の髪。それは前髪だけ長く輪郭を覆っている。真っ直ぐなそれはまるで絹糸のように細くしなやかだ。
そして肌の色も暗闇に浮かび上がるように白い。雪のようだとかそんな比喩も忘れる程に白い。

