「隣合わせの部屋を使ってくれ。無論、同じでも構わないが」
長居するつもりはない。それならどちらでも構わない、というよりどうでもいい。銀は特に何も答えなかったが陽は反応を示した。
「じゃ、違う部屋で」
陽はそう言ってちらりと銀を見てきた。その目は銀が知っているものではない。
自分は陽のことなど殆ど何も知らないのかもしれない。
遠い親戚だと教わっていた。面倒見のいい、お兄さんのような存在だと思っていた。いつも、優しかった。
たまに横暴だと思うときもあった。それでも慕っていた。
でも、彼の思惑は違うところにあったのかもしれない。そこに立っているのは銀の知らない陽の姿だった。
「俺、左側な」
浅黄が去っていった後、陽はそれだけ言い、銀の横をすり抜けようとした。
「待って下さい」
幼いとき、陽に言われた。
『お前のが年下なんだから、敬語を使え』
そのときの陽の気持ちはどんなものだったのだろう。

