休み時間の最中を過ぎた教室は更に煩さを増した。だが一部の女子は急に言葉を止め、大人しくなる。その理由を雪弥は知っていた。

酉嶋がいるからだ。

彼はこの小さな田舎の学校では類を見ない程の美形らしい。だが雪弥にはそれ程には感じられなかった。

確かに甘めの顔立ちをしているし、悪くはない。ただそんなに騒ぐ程かと聞かれると首を傾げる。それは雪弥が他に「美形」と呼べる者を幾らも知っているからだった。

「何のご用でしょうか」

雪弥は酉嶋の目を真っ直ぐに見ながら訊いた。すると酉嶋は会いに来ただけだよ、と告げる。

その言葉を耳にした瞬間、肌が粟立った。

――会いに来ただけです。

遠い昔の声が甦ったように思えたが、そんなはずはないと言い聞かす。それは私の記憶ではない。況してや私ではない、と言い聞かす。

それに、彼はそれとは関係ない。