「ええ……お休みなさい」

まだ寝るような時間ではない。これは、部屋で大人しくしていろという緋川の忠告なのだろう。

雪弥が答えると緋川は笑みを深めて頭を下げた。そして、静かに踵を返し、もと来た廊下を歩いていく。

雪弥は自室へと入り、浴衣へと着替えた。

今はこれ以上何かについて考えるだけ無駄かもしれない。

心の内でせめぎ合うもの。

自分の為に誰かを犠牲にすること。己が命を放り出すことで犠牲にする仲間。

どちらも何かを犠牲にしなくてはならない。

それなら私は迷わず仲間を選ぶ。そう思ってきた。番人たるもの、喜んで自分に付き従うを思ってきた。

なのに、銀という人間はそれを拒む。

彼を見るまで、彼の話を聞くまでそんなことはないと思っていた。それでも彼に会い、言葉を聞き、それが如何に理不尽であるかを知った。

だから、彼の気持ちは理解出来る、と言ってみたのだ。