抗おうとした。なのに、首は勝手に縦に振れる。そこには全く自分の意思などなかった。

妙な感覚に銀は畏れを覚えた。これは一体何なのだ。

己の身体に流れる血がそうさせるのか。だとしたら、本当に自分の存在というのは何なのか。

自分は「霧原銀」という個体ではなく、「鬼神姫の番人」でしかないのか。

「浅黄。二人を部屋に案内しなさい」

雪弥はそう言うと緋川に手を取られて立ち上がった。着物姿の二人はそこまでまるで異様な空間のように見えた。

現代ではなく、かといって過去を見ているのとも違う。とはいえ、銀の胸の奥には灼け付くような何かが芽生えた。