「とはいえ、東西南北の番人が揃わなければ運命は変えられませんよ」

緋川が着物の袖で口許を覆いながら銀を横目で見た。そこにはあるのは下等な生物を見るものではなく、侮蔑の眼差しであった。

何故、こんな目で見られなくてはならないのか。

緋川の言葉に雪弥は幾らかの時、思案しているようだった。そして、口を開く。

「……三日、与えます。その三日、此処で過ごし、考えてみてはくれませんか?」

雪弥は静かな声で告げた。

三日貰おうが、一ヶ月貰おうが、考えが変わるわけはない。

それでも、自分が断れば、この娘は命を落とすのだ。

小柄で、色白で、鬼などではなく人の娘にしか見えないこの少女が。

それでも頷くことは躊躇われた。何故なら……。

「これは鬼神姫の命令です。従いなさい」

銀の思考を遮って緋川が冷たく言い放った。