何時から貼られているのか解らない掲示物がまず目に入った。紙は黄ばみ、元は角のあった端は所々丸くなってしまっている。そこに書かれているのは肝試しの誘い。

何年前に肝試しが行われていたのか。

雪弥はそんなことを考えながら声の主を見た。そこには口角の上がった青年がいる。茶色の髪は癖が強そうで少し跳ねている。

その彼は更に口角を上げ、にんまりと雪弥に笑い掛けている。

「酉嶋先輩」

雪弥は彼の名を呼んだ。するとその男――酉嶋渚は目を細めた。

つい三ヶ月程前から彼はよく雪弥に話し掛けてくるようになった。雪弥は二年、酉嶋は三年なのにも関わらず。よくこうして休み時間に教室に訪れては雪弥に声を掛けてくるのだ。

一度、理由を尋ねたことがある。擦れ違う度に声を掛けられるのを煩わしいと思ったからだ。

すると酉嶋は今のように目を細めて、好みなんだ、とだけ告げた。だがそれを裏付けるような行為を今までしてきたことはない。

ただこうして、目の前に現れるだけ。