「……ふぅん」
酉嶋は長い指をひらひらとさせながら漂う空気から何かを読み取った。
空の一部には暗雲が立ち込めていて、そこだけはいつ雨の滴を地上へと垂らしても可笑しくないような気配。酉嶋はその一点を見詰めた。
「羽鴉だって、幾つもあるわけじゃないんだけどな」
一片の羽を己の唇に軽く翳す酉嶋。その羽の色は黒から灰色へとグラデーションがかかっていて、それはこの世のものではないことを示している。
「まあまあ、てところかな」
その羽は酉嶋が唇から離すと光となってたち消えた。
酉嶋はその光景を暫し眺めてからまた空へと視線を戻した。胸に渦巻く感情を教えてくれた者はいなかった。自身で解釈するしかなかった。
--ならば、何度でもこの手にかけよう。この輪廻が永久に葬られるように。
「期待しているよ。三つの神よ」
酉嶋はそれだけ言うと、誰もいない教室を後にした。

