ーーーーーー三月(みつき)前。
春がそろそろ終わろうと花が緑に変わり始めた頃。
雪弥は己の二の腕に浮かぶ奇っ怪な紋様に目を奪われた。
それに気付いたのは朝、着物からセーラー服へと着替えるとき。夕べ風呂に入ったときには確かにこんなものはなかった。
それはまるで大蛇が畝っているように見えたが、それは一瞬であり、よく見ると何やら獣の姿をしているようだった。
大きな嘴に鋭い目、身体はまるで猿のようだ。
色は黒ではなく、赤黒い。
『浅黄(あさぎ)』
雪弥は隣の部屋にいるであろう者の名を大きな声で呼んだ。すると、刹那ののち、失礼します、と雪弥の部屋の襖が開けられた。
雪弥は下着姿なのを恥じることもなく、浅黄という男にその腕を見せた。浅黄はまた失礼します、と言い、雪弥の細く白い腕を自身の掌に乗せた。

