鬼神姫(仮)



そして、凪が同じ台詞を口に出し、雪弥は現実へと戻ってきた。

「これらの誓いを果たせない限り、人間達は契約に縛られたままになります。なので、一人の番人はその柵から抜け出す為に、葛姫様を殺したのです」

しかし、葛姫を殺したところで契約が果てることはなく、今の世まで続いているのだ。

「……それで、こいつが狙われているのか?」

銀は雪弥に僅かに視線を向けてきた。

「そうです。西の番人の末裔は、雪弥様を殺すことで、柵から解き放たれようとしているのです」
「でも、殺したって無理なんだろ?」

本人である葛姫を殺しても解けないものが、雪弥を殺したところで解けるというのだろうか。

「……各々が覚醒し、そして、全員で雪弥様を殺せば、その柵はなくなります」

凪の答えに、銀がひゅ、と喉を鳴らした。雪弥に至っては、思考が上手く回らないでいる。

緋川が語らない理由はそれだ。

それを人間達に教えた場合、彼等がそれを実行しないとは限らない。自分の為、子孫の為、と手を取り合う可能性もある。

「雪弥様がお亡くなりになると、この土地の治安は崩れます。そして、鬼達は消滅する。鬼はこの地でないと暮らしていけないのです。例外はありますが、それは人間の血の入った鬼や、鬼としての能力が低い者のみです。純血の鬼、力を有した鬼は外の地では生きていけないのです」

──如何に、自分が鬼について何も知らないかわかった。

鬼の存在についても何も知らなかったのだ。この地でしか生きていけないということも。

ならば、自分が殺されるわけにはいかない。鬼の一族の為にも。