「そして、鬼の頂点に立つ鬼神姫こと葛姫、人間の頂点に立つ花神姫こと花雪(かゆき)姫がいたのです」
人間の頂点に立つ花神姫。そんな存在を雪弥は初めて聞いた。そして、今もその存在があるのかどうかも知らない。
「しかし、花雪様が山の上の鬼に狙われたのです」
山の上の鬼。それも雪弥の知らない存在だ。
恐らく、人形をした自分達鬼とは異なる存在なのだろう。妖かしと呼ばれる類いのものだ。異形の姿をし、自然と共に暮らす存在。
「狙われた理由は、花雪様の持つ特殊な力です。彼女は人間でありながら、神。自然を左右するお力をお持ちでした」
──ならば、その存在は鬼神姫より尊いものと言える。
ちらりと銀を見ると、彼は思うところがあるのか何かを考えているかのような表情をしている。
「そこで、四方の土地を携える者達が鬼神姫の元へと参りました。花雪様を助ける為に。花雪様の婚約者である花邑様、それに仕える霧原様、土台の地を固める氷沢様、そして、彼等を纏める酉嶋」
酉嶋にだけ敬称を付けないのは、己も酉嶋であるが為だろう。
語る凪の顔は真剣なもので、雪弥の知らない凪がそこにはいた。
凛と背筋を伸ばし、淡々と語る。まるで、それらを見てきたかのような口振りだ。
「葛姫様は、彼等に力を与えようと仰有いました。花雪様をお助け出来るだけの能力を、ただの人間である彼等に与えよう、と。葛姫様は元々、人間に傾倒していたお方です。四方を囲ませたのも彼女で、花雪様とも暫し交流がありました」
人間と鬼が共存する土地。そのようなものがあったことすら信じられなかった。

